古雛ふるびな)” の例文
ふとその飾った形も姿も、昔の故郷の雛によくた、と思うと、どの顔も、それよりは蒼白あおじろくて、きぬかむり古雛ふるびなの、たけが二倍ほど大きかった。
雛がたり (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
水々しい吉原絢燗期の女は、江戸戯作者の筆になるころもう燃えつきてしまい、ぼくらが書生時代に嗅いだ吉原は、すでに古雛ふるびなのカビの美でしかなかったものか。
紅梅の客 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
三 古雛ふるびなに霊があることはしばしば耳にする所でありながら、実は今まではその理由が分らなかった。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
むつかしきほおふくらしてひたすらに世をにらみつけたる愛嬌あいきょうなさに前の持主にも見離され道端の夜店にほこりをかぶりて手のなき古雛ふるびなと共にさびしく立ち尽したるを八銭に代へて連れ帰り
土達磨を毀つ辞 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)