古廟こびょう)” の例文
「こうしていては、この身まで、雪の中に埋められてしまう。そうだ、今夜はさっきの古廟こびょうに寝て、夜が明けてからの思案としよう」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
折柄おりから四時頃の事とて日影も大分かたぶいた塩梅、立駢たちならんだ樹立の影は古廟こびょう築墻ついじまだらに染めて、不忍しのばずの池水は大魚のうろこかなぞのようにきらめく。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
しかし戦闘継続中は隊の方でもそんな世話を焼いていられないので、私たちは勝手に宿所を探さなければなりません。空家へはいったり、古廟こびょうに泊まったり、時には野宿することもありました。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ところが、その間に、古廟こびょうの方から走ってきた者が、後ろの方で、なにやらコソコソ耳打ちし合っていたのだった。やがて林冲のそばへ来て
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼が、この古廟こびょうに詣でて、こうした思念の闘いに坐したのは、必ずしも、途中の出来ごころや偶然ではない。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
宋江は生ける心地もなく、ふと目の前に見えた古廟こびょうへ、双肩もろかたをぶつけてころがりこんだ。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして、何処か知らぬ、古廟こびょうの荒れた門前で、駒を降りてひと休みした。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)