双腕もろうで)” の例文
旧字:雙腕
幾日も幾日も、そうした情景が続いた後、少女はとうとうその牝鹿めじかのようにしなやかな身体を、俊寛の強い双腕もろうでに委してしまった。
俊寛 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
まぶたに浮んでくるのは、猿沢の胸に濃く密生した胸毛の色とか、双腕もろうでのぐりぐり筋肉の形とか、そんなものばかりで、背中のことは全然浮んでこないのです。
Sの背中 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
輕しとかこちし三尺二寸、双腕もろうでかけて疊みしはそも何の爲の極意ごくいなりしぞ。祖先の苦勞を忘れて風流三昧にうつゝを拔かす當世武士を尻目にかけし、半歳前の我は今何處いづくにあるぞ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
桜子はそう思い乍ら、もう一度うとうとしかけましたが、夜の物が厚かったせいか、少し汗ばむような気がして、我にもあらず、双腕もろうでを浅く抜いて、絹夜具の上へ投げました。
酔っぱらいの年増女は、双腕もろうでを僕の方に伸ばしたまま、酒棚の前からフラフラ出てきた。
深夜の市長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その時、父の老いてはいるけれども、なお力強い双腕もろうでが、彼女の身体を力強く支えたのである。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
銭形平次ほどの者も、思案に余って双腕もろうでこまぬきました。