午時ひる)” の例文
午時ひるもややかたぶきぬれど、待ちつる人は来らず。西に沈む日に、宿り急ぐ足のせはしげなるを見るにも、かた七九のみまもられて心へるが如し。
次の日の午時ひるごろ、浅草警察署の手で、今戸の橋場寄りのある露路ろじの中に、吉里が着て行ッたお熊の半天が脱ぎ捨ててあり、同じ露路の隅田河の岸には
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
午時ひる近くなつて、隣町の方から、『豆腐ア』といふ、低い、呑気な、永く尾を引張る呼声が聞えた。
葬列 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
真蔵は銘仙の褞袍どてらの上へ兵古帯へこおびを巻きつけたまま日射ひあたりの可い自分の書斎に寝転ねころんで新聞を読んでいたがお午時ひる前になると退屈になり、書斎を出て縁辺えんがわをぶらぶら歩いていると
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
そのうちに午時ひるも過ぎたところで、東の方からかの稚児髷の少女が来た。女の家はぐそこであった。それは門も家も大きく、蔀おろし簾たれこめた夢の中に見たのとすこしもかわらない家であった。
蛇性の婬 :雷峰怪蹟 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
午時ひる近くなつて、隣町の方から『豆腐とうふア』といふ、低い、呑氣な、永く尾を引張る呼聲が聞えた。
葬列 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
午時ひる過ぎて二三時、昨夜ゆうべあか流浄おとして、今夜の玉とみがくべき湯の時刻にもなッた。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
六八午時ひるかたぶくまで尋ねわづらひたるに、かの丫鬟わらは東の方よりあゆみ来る。豊雄見るより大いに喜び、六九娘子をとめの家はいづくぞ。かさもとむとて尋ね来るといふ。丫鬟打ちゑみて、よくも来ませり。