千枝ちえ)” の例文
「あなただつて鏡さへ見てゐれば、それでもう何も忘れてゐられるんぢやありませんか。千枝ちえちやんと違ふのは、退屈なのが汽車の中と世の中だけの差別ですよ。」
東京小品 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
つねにしたひむつべるともにしあればことにうれしくてなほつがののいやつぎ/\にたゆみなく千枝ちえ八千枝やちえにしげりて木高こたかきかげとなりたまはんことをかつはしゆくしてたゝ一言ひとこと
うもれ木:01 序 (旧字旧仮名) / 田辺竜子(著)
母の名は千枝ちえといった。私は今でもこの千枝という言葉をなつかしいものの一つに数えている。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
千枝ちえにわかるゝ赤樟あかくす
若菜集 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「おお、千枝ちえまよ」
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
何故なぜだらうと思つて聞いて見ると、この奥さんの良人をつと逗子づしの別荘にやまいを養つてゐた時分、奥さんは千枝ちえちやんをつれて、一週間に二三度づつ東京逗子間を往復したが
東京小品 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
千枝ちえにわかるゝ赤樟あかくす
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
その日自分の書斎には、梅の花がけてあつた。そこで我々は梅の話をした。が、千枝ちえちやんと云ふその女の子は、この間中あひだぢう書斎のがく掛物かけもの上眼うはめでぢろぢろ眺めながら、退屈さうに側に坐つてゐた。
東京小品 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)