北殿きたどの)” の例文
「…………」すけは、何か考えこんでいたが、やがて、吉光きっこうまえの住む北殿きたどのへ走って、そこで、彼女としばらく何か話していた。範綱も、やがて知って
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何でも、法皇様をしばらく鳥羽の北殿きたどのへお移し申すか、それとも六波羅へ来ていて頂こうというおつもりとのことでしたが、内心は、九州の方へでもお流し申そうというご計画に思われます
北殿きたどの(探題北条範貞の事)ご諚じゃよ! そちへのご諚じゃ!」
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「暁近くなりにけるなるべし、隣の家々、あやしきしづの声々めざましく、あはれ、いと寒しや、ことしこそ、なりはひに頼む所少く、田舎のかよひも思ひがけねば、いと心ぼそけれ、北殿きたどのこそ聞き給へや」
『新訳源氏物語』初版の序 (新字新仮名) / 上田敏(著)
執事のこう師直もろなおは、定刻、六波羅北殿きたどのひさしの一室で、いつもどおり坐っていた。