北叟笑ほくそえみ)” の例文
両手で受け取った猪右衛門は謂うところの北叟笑ほくそえみ、そいつを頬へ浮かべたが、「これで取引は済みました。ではお嬢様え、ご免なすって」
南蛮秘話森右近丸 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
手足の動かぬを何にかせむ、歌妓うたひめにも売れざるを、塵塚ちりづかに棄つべきが、目ざましき大金おおがねになるぞとて、北叟笑ほくそえみしたりしのみ。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その顔附から見て、彼の予測や見積りや思案は、どうやら上々の首尾であったらしい、それというのも一々その思いが絶えず満足そうな北叟笑ほくそえみの跡を残してゆくからである。
彼はことごとく満足して、思はず露骨な北叟笑ほくそえみを洩らしたのである。
という顔色がんしょくで、竹の鞭を、トしゃくに取って、さきを握って捻向ねじむきながら、帽子の下に暗い額で、髯の白いに、金があらわ北叟笑ほくそえみ
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
何んにも言わず急にものもいわれないでみまもると、親仁おやじはじっと顔を見たよ。そうしてにやにやと、また一通りの笑い方ではないて、薄気味うすきみの悪い北叟笑ほくそえみをして
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「行く処が無えというんだよ。」「や、此奴こいつ太々ふてぶてしい、乞食こつじき非人の分際で、今の言草は何だ。夫人おくさまの御恩を忘れおったか、外道げどうめ。」と声を震わし、畳を叩きていきまけば、ニタニタと北叟笑ほくそえみ
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「いずれ帰ったら奢らせることに致しましょうよ。」と北叟笑ほくそえみをする。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
といい果てて親仁おやじはまた気味の悪い北叟笑ほくそえみ
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)