匆卒そうそつ)” の例文
以上は匆卒そうそつの間に筆をとった一葉の素描のようなものに過ぎないのであって、色々の点で間違いや思い違いがありはしないかと気遣わしい。
工学博士末広恭二君 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
滝田くんについてはこのほかかたりたいこともないわけではない。しかし匆卒そうそつあいだにもかたることの出来るのはこれだけである。
滝田哲太郎君 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
右の細木香以伝は匆卒そうそつに稿を起したので、多少の誤謬ごびゅうを免れなかった。わたくしはここにこれを訂正して置きたい。
細木香以 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
以上は当時余輩が極めて匆卒そうそつの際において、殆ど一夜漬けとも謂うべき極めて粗雑なる駁論の梗概である。
法隆寺再建非再建論の回顧 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
ベースボールいまだかつて訳語あらず、今ここにかかげたる訳語はわれの創意にかかる。訳語妥当だとうならざるは自らこれを知るといえども匆卒そうそつの際改竄かいざんするによしなし。君子くんし幸にせいを賜え。
ベースボール (新字新仮名) / 正岡子規(著)
兵馬匆卒そうそつの際、言論も自由なれば、思うがままに筆をふるうてはばかるところなく、有形の物については物理原則のあざむくべからざるを説き、無形の事に関しては人権の重きを論じ
以上の匆卒そうそつなる瞥見べっけんによっても、いわゆる短歌の連作と見らるべきものの中には非常に多様な型式が実存し、極端に単純な輪唱ふうのものから
連句雑俎 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
走者は匆卒そうそつの際にも常に球の運動に注目しかかる時直ちに進んで険をおかし第二基に入るか退いて第一基に帰るかを決断しこれを実行せざるべからず。第二基より第三基に移る時もまたしかり。
ベースボール (新字新仮名) / 正岡子規(著)
匆卒そうそつの間に筆を執ったためにはなはだ不秩序で蕪雑ぶざつな随感録になってしまったが、トーキーの研究者に多少でも参考になることができたら大幸である。
耳と目 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
もっともそういう場合だけに注意を引かれ、そうでない場合は特に注意しないために、匆卒そうそつな結論をしてはいけないと思って、ある日試みに某百貨店で半時間ぐらい実地の観測を行なってみた。
蒸発皿 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)