割愛かつあい)” の例文
「焼芋を食うも蛇足だそくだ、割愛かつあいしよう」とついにこの句も抹殺まっさつする。「香一炷もあまり唐突とうとつだからめろ」と惜気もなく筆誅ひっちゅうする。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
どうぞあなたの貴重な時間の十五分間をわたくしに御割愛かつあいなさって下さいまし。ちょうど夫は取引用で旅行いたしまして、五六日たたなくては帰りません。
田舎 (新字新仮名) / マルセル・プレヴォー(著)
「れ・ろまねすく」「世界の花嫁」まで見て割愛かつあいして帰って来た。連句はとうとうお休みである。
馬好きな信長としては何物にもかえ難かろうに、それをしも割愛かつあいして贈ったのは、誠意にたいして誠意を見せたものであろう。家康もまた、心ひそかに、満足を抱いた。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それで太宰府だざいふは寄っても仕方あるまいとあって割愛かつあいすることになり、降り込められる覚悟で大層早目に佐賀に着いてしまった。ところが佐賀は晴天で埃が立つほどだった。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
これからの対応が頗る面白いのでありますが人様の前は申難もうしにくいので割愛かつあい致します。
楢重雑筆 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
かつ全部の作曲家を網羅もうらすることは、本書のくわだてにおいては無意味に属するので、それらの大部分は歌劇作曲家並びに現存作曲家の全部と共に、ことごとく本記に割愛かつあいし、ここに音楽史的に瞥見べっけんして
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
叔父も家を建てる意思があったから、島崎さんの地所を半分割愛かつあいしてくれと申込んだ。永久に独身と定めているから、老後が案じられる。親友と一緒なら面倒を見て貰えるという肚だった。
変人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「そうそう人売りの話しをやっていたんだっけ。実はこの伊勢源についてもすこぶる奇譚きだんがあるんだが、それは割愛かつあいして今日は人売りだけにしておこう」「人売りもついでにやめるがいい」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「しかしこれは割愛かつあいしましょう。ハッハヽヽ」
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「しかし今晩は時間がないから、うなるまでの経過は割愛かつあいしよう。小宮君あたりと違って、鼻の下の寸法が短いから、元来その任でない。兎に角、以前から出入していたんだから、その辺のところは君の常識で宜しく察してくれ給え」
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)