前橋まえばし)” の例文
それからあの、赤城あかぎの、こうずうとたれとる、それそれ煙が見えとるだろう、あの下の方に何だかうじゃうじゃしてるね、あれが前橋まえばしさ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
スマイル、スミスと申しまする人は、彼国あちらで蒸汽の船長でございます。これを上州じょうしゅう前橋まえばし竪町たつまち御用達ごようたし清水助右衞門しみずすけえもんと直してお話を致します。
あれの父親は、ことしで、あけて、七年まえに死にました。まあ、昔自慢してあわれなことでございますが、父の達者な頃は、前橋まえばしで、ええ、国は上州じょうしゅうでございます。
十五年間 (新字新仮名) / 太宰治(著)
磯部桜といえば上州の一つの名所になっていて、春は長野ながの高崎たかさき前橋まえばしから見物に来る人が多いと、土地の人は誇っている。なるほど停車場に着くと直ぐに桜の多いのが誰の眼にもはいる。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
此処こゝへ大橋の方から前橋まえばし松屋新兵衞まつやしんべえが駈付けてまいりましたが、人ごみで少しも歩けませぬ、突退つきの撥返はねかえし、あるいは打たれ或はたゝかれ、転がるように駈出しましたが
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
向うから前橋まえばし竪町たつまち商人あきんどが江戸へ商用で出て来て、其の晩亀戸かめいど巴屋ともえやで友達と一緒に一杯飲んで、おりを下げていたが酔っているから振り落して仕舞って、九五縄くごなわばかり提げ
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
れもまた一役ひとやくで、悉皆すっかり出来た処で此品これを持ち、高崎たかさき前橋まえばしの六斎市さいいちの立ちまする処へ往って売るのでございますが、前橋は県庁がたちまして、大分だいぶ繁昌でございまして、只今はなお盛んで有りますが
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)