初瀬はつせ)” の例文
初瀬はつせ吉野よしの宮古みやこの沈没などをも考えて、「はたして最後の勝利を占めることができるだろうか」という不安の念も起こった。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
西生駒いこま信貴しぎ、金剛山、南吉野から東多武峰とうのみね初瀬はつせの山々は、大和平原をぐるりとかこんで、蒼々そうそうと暮れつゝある。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
立往生たちおうじょうをする代りに、籠堂へ坐り込んで一夜を明かした、が、百八煩悩ぼんのうを払うというなる初瀬はつせの寺の夜もすがらの鐘の音も、竜之助が尽きせぬ業障ごうしょうの闇に届かなかった。
その夜の十時頃、妹の田鶴たづさん、不二子さん、水脈みをさん、初瀬はつせさん、健次君、丸山君、藤沢君等を部屋に呼び、『おれはなるべく物を云はぬから、そつちでお茶を飲んで呉れ』
島木赤彦臨終記 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
初瀬はつせざんげ
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「さて、明日は大和へ入って萩原はぎわらへ泊る、それから宇陀うだの松山へ出ようか、初瀬はつせへかかろうか」
御室みもろ三輪山みわやまれば隠口こもりく初瀬はつせ檜原ひはらおもほゆるかも 〔巻七・一〇九五〕 作者不詳
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)