切放きりはな)” の例文
売薬もこれで迷ったのであろうと思う内、切放きりはなれよくむきを変えて右の坂をすたすたと上りはじめた。見るに檜をうしろくぐり抜けると、わしが体の上あたりへ出て下を向き
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
磨出みがきだしたい月夜に、こまの手綱を切放きりはなされたように飛出とびだして行った時は、もうデロレンの高座は、消えたか、と跡もなく、後幕うしろまく一重ひとえ引いた、あたりの土塀の破目われめへ、白々しろじろと月が射した。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)