“函（ケース）” の例文
「出てらっしゃい！」ヴェリチャーニノフは言って、「あなたの函（ケース）をお持ちなさい」と、出て行こうとする彼の後ろからつけ加えた。
永遠の夫 (旧字新仮名) ／ フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー(著)
すると、一つの石か、瓦か、鋪石（しきいし）の破片のようなものの下の土の中に、小さな革製の函（ケース）か嚢かの塵になったものと雑（まじ）って、塵になってしまった紙が見つかったんだそうですよ。
二都物語：01 上巻 (新字新仮名) ／ チャールズ・ディケンズ(著)
法水は取り出した莨（たばこ）を、思い直したように函（ケース）の中に戻して、途方もない質問を発した。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) ／ 小栗虫太郎(著)
「あるいは、そうかもしれんがね」と法水は莨（たばこ）で函（ケース）の蓋を叩きながら、妙に含むところのあるような、それでいて、検事の説を真底から肯定するようにも思われる——異様な頷（うなず）き方をしたが
黒死館殺人事件 (新字新仮名) ／ 小栗虫太郎(著)
出しかけた莨（たばこ）を再び函（ケース）の中に戻してしまった。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) ／ 小栗虫太郎(著)