冠者かじゃ)” の例文
いつのまにかおりっぱな冠者かじゃにおなりなされ、世が世ならばもういまじぶんはひとかどのおんたいしょうでござりますけれども
盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「木曾の冠者かじゃ義仲よしなか近江おうみ以北の諸源氏をかたらって、伊豆の頼朝に応じて候」とある。愕然がくぜんと、六波羅の人心は、揺れうごいた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「太郎冠者かじゃ殿まず一杯、ご相伴しょうばんをなされ、ご相伴をなされ」こういって首を前へ伸ばした。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「わしは聖教を見ない日とてはない。木曾きそ冠者かじゃが都へ乱入した時だけ只一日聖教を見なかった」それ程の法然も後には念仏の暇を惜んで称名しょうみょうの外には何事もしなかったということである。
法然行伝 (新字新仮名) / 中里介山(著)
里人さとびとの噂をきいて、いつはやく、時親の門をたたいたのは、ここから遠からぬ赤坂の水分みくまりに住む楠木家の一冠者かじゃだった。つまり正季の兄、正成である。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おろかよのう。まだ年ばえも二十歳を越えず、世に隠れない舞の手も持ちながら、何で、九ろう冠者かじゃのような、らちもない男を恋い慕うぞ。……はははは、酔狂すいきょうな女子よ」
日本名婦伝:静御前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「臆病者っ、いらえをせぬか。寿童冠者かじゃが勢いにじて、も出さぬとみえる。——皆の者、石をほうれっ、石を抛れっ」声がやむとすぐ、ばらばらっと、石つぶてが、やかたひさしや、縁に落ちてくる。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「足利とは、あの高氏と申すあばた冠者かじゃのことで」
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)