入牢にゅうろう)” の例文
人を騒がした罪は憎しとするも、根がかたき討ちにその動機を発していましたものでしたから、四日の入牢にゅうろうだけで軽く放免になりました。
どうも、大変な話じゃありませんか。それから組頭がつかまえられると同時に家捜やさがしをされて、当人はそのまま伝馬町てんまちょう入牢にゅうろうさ。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
れから脇屋を捕まえると同時に家捜やさがしをして、そうしてそのまま当人は伝馬町に入牢にゅうろう申付もうしつけられ、何かタワイもない吟味ぎんみの末、牢中で切腹を申付られた。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
いまの無礼の雑言ぞうごんだけでも充分に、免職、入牢にゅうろうの罪にあたいします。けがらわしい下賤げせんの臆測は、わしの最も憎むところのものだ。ポローニヤス、建設は永く、崩壊は一瞬だね。
新ハムレット (新字新仮名) / 太宰治(著)
平野町の里方は有福ゆうふくなので、おばあ様のおみやげはいつも孫たちに満足を与えていた。それが一昨年太郎兵衛の入牢にゅうろうしてからは、とかく孫たちに失望を起こさせるようになった。
最後の一句 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「業態にも不審があるうえに、かような根もなき訴えをするとは不届き極まる仕方だ、重罪をも申付けるべきところ、上のお慈悲によって、主従四名に三十日の入牢にゅうろうを申し渡す、立て」
改訂御定法 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
入れるべきところに事を欠いて、七ツ屋に入牢にゅうろうさせるとは、もってのほかのふらち不行跡だったからです。
「それがです。」と清助もその話を引き取って、「あの名主は親子とも入牢にゅうろうを仰せ付けられたとか、いずれ追放か島流しになるとか、いろいろなことを言いましょう。 ...
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そこで太郎兵衛が入牢にゅうろうしてとうとう死罪に行なわれることになったのである。
最後の一句 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「——よしんば盗みをはたらいたにもせよ、恩賞をめあてに、妻が良人おっとを訴えるという法はない、人倫にそむく不届きな女である、吟味ちゅう入牢にゅうろうを申付ける、ということなんだそうです」
「事ここにいたっては、祭礼中といえども容赦はならぬ。吟味中入牢にゅうろうを申しつくるによって、これなる屋台にかかわり合いの町人一統、神妙におなわをうけいッ」
両人のものが役所に出頭して見ると、直ちに入牢にゅうろうを仰せ付けられて、八沢やさわ送りとなった。福島からは別に差紙さしがみが来て、年寄役付き添いの上、馬籠の庄屋に出頭せよとある。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
いずれは堆朱ついしゅか、螺鈿らでん細工のご名品にちがいないが、それに珊瑚珠さんごじゅの根付けかなんかご景物になっていたひにゃ、七つ屋へ入牢にゅうろうさせても二十金どころはたしかですぜ。
「わたしは馬籠をたつ時に、家のものからもそんなことを言われて来ましたよ。でも、木曾十一宿の総代で呼び出されるものをつかまえて、まさか入牢にゅうろうを申し付けるとも言いますまい。」
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)