免状めんじょう)” の例文
「僕は先生が信用してくれないから、勉強する気にならないんだよ。これでも尋常じんじょう一年の時は優等ゆうとうだったぜ。うそだと思うなら免状めんじょうを見せてやる」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
同じ船乗りなら免状めんじょうもちになろうというんで、これでも勉強したもんじゃ。学校へ行っとらんもんで、わしらは五年がかりでやっと乙一の運転手になったあ。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
いよいよ卒業そつぎょうした生徒せいとたちが、お免状めんじょうっていえかえるときでした。校長先生こうちょうせんせいは、わざわざ廊下ろうかへいすをして、一人ひとり一人ひとりかおをじっとごらんになりました。
中学へ上がった日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それはまだ母が勤め奉公時代に父と母との間に交された艶書えんしょ、大和の国の実母らしい人から母へてた手紙、琴、三味線、生け花、茶の湯等の奥許おくゆるしの免状めんじょうなどであった。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
が、お慈悲じひで通わせてくれている私には免状めんじょうなど与えられないとのことであった。それでは私は進級することもできないわけだ。母はまた校長のところに行って私のことを頼んでくれた。
今では共に亡びてしまって行くえが分らず、奥許しの免状めんじょうに署名している茶の湯、生け花、琴三味線等の師匠ししょうの家筋も、多くは絶えてしまっていたので、結局前に挙げた文を唯一の手がかりに
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
みんなは免状めんじょうをもらってニコニコしていた。けれど私にだけは、教師の約束があったのにもかかわらずくれなかった。今か今かと最後まで私は待った。そしてとうとう待ちぼうけであるのを発見した。