なんじ)” の例文
頭より尾に至る長さ千余丈、ひづめより背上に至る高さ八百丈。大音に呼ばわっていわく、なんじ悪猴わるざる今我をいかんとするや。
なんじに筧の水の幽韻ゆういんはない。雪氷をかした山川の清冽せいれつは無い。瀑布ばくふ咆哮ほうこうは無い。大河の溶々ようようは無い。大海の汪洋おうようは無い。儞は謙遜な農家の友である。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
道元が趙州じょうしゅうの「儞若一生不叢林、兀坐不道、十年五載、無人喚作儞唖漢」[なんじ若し一生不離叢林ふりそうりんなれば、兀坐不道ごつざふどうならんこと十年五載すとも
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
猫に逢うて餌肉を少し分けてくれと頼むと、猫笑ってなんじほどの愚物はあるまい、何故自分で番しおる水牛をわぬかと言った、これまで毎夜村に寝た虎がその夕森に
大いに愕き逃げ出すを牝獅が呼び止め何と爾今じこん一処に棲んでなんじが不在には我が儞の児を守り我不在にはわが児を儞に託する事としようでないかというと、虎も応諾して同棲し、獅児を善牙
彼はこの危険な弟子に向って言った。もはや、伝うべきほどのことはことごとく伝えた。なんじがもしこれ以上この道の蘊奥うんのうを極めたいと望むならば、ゆいて西のかた大行たいこうけんじ、霍山かくざんの頂を極めよ。
名人伝 (新字新仮名) / 中島敦(著)
おれ通力つうりきによって八十万里を飛行ひぎょうするのに、なんじの掌の外に飛出せまいとは何事だ!」言いも終わらず觔斗雲きんとうんに打乗ってたちまち二、三十万里も来たかと思われるころ、赤く大いなる五本の柱を見た。