偽装ぎそう)” の例文
旧字:僞裝
というような、極めて悪性な讒言ざんげんと、偽装ぎそう腐心ふしんし、そのまに、毛利家の軍事顧問を入れ、城郭じょうかくほりを深め、塀を高くしていた。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
偽装ぎそうのためではない。なぜか自然に、そういう気持になった。口笛の余韻よいんが、月にかすむように、空へ消えて行った。
月と手袋 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
その場合には一見他の民主的な政党と異ならないように偽装ぎそうするが、一度政権を握ったら、右にいうような独裁党の本質を露骨ろこつ発揮はっきするのである。
政治学入門 (新字新仮名) / 矢部貞治(著)
そんな綽名あだながどうかすると、とんだ喰わせ者の偽装ぎそうになっていることを、いろいろの機会で教わっているのです。
(こうして、もうしばらくアンのそばにいれば、本当に自分が彼女の亭主であるか、それとも防空壕の中で、臨時にとらえられた偽装ぎそう亭主であるかが判明するだろう)
英本土上陸戦の前夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
さっき市の雑沓のなかで、博労ばくろうにどなられたのは、信長だった。従者は柴田勝家しばたかついえである。もちろん微行びこうで、その偽装ぎそうにも細心な気をくばっている。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この地下街に入るには、東京市内で六ヶ所の坑道入口こうどういりぐちが設けられてあった。いずれも、偽装ぎそうをこらした秘密入口であるために、入口附近に居住している連中にも、それと判らなかった。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ただ口賢くちがしこく、そのくせ信念はなく、自分のもってゆきたい所を巧みに糊塗ことして、介在している世俗的に頭のよいのが在ることも勿論だったが、そういう偽装ぎそう
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一学ばかりでなく、今、吉良殿の身辺を守っている重要な浪人組として邸内に住み込んでいる者は、すべて自分達のすがたも赤穂浪人へ対して偽装ぎそうするのを必要と考えていた。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なぜならば、それもまたこの隠れ家の偽装ぎそうのひとつになるからである。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)