偶中ぐうちゅう)” の例文
幸いお延がお秀の後をおっかけて出た事は、下女にも解っていた。偶発の言訳が偶中ぐうちゅうこうを奏した時、津田は再度の胸をおろした。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
景隆支うるあたわずしてのがれ、諸軍も亦かててゝはしる。燕の諸将ここに於て頓首とんしゅして王の神算及ぶからずと賀す。王いわく、偶中ぐうちゅうのみ、諸君の言えるところは皆万全の策なりしなりと。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
併し彼様な偶中ぐうちゅうは有り中の事で畢竟気に掛ける余が神経の落ち着いて居ぬ為である、夫は兎も角も此の男が斯うも秀子の事を悪く言うは許婚も同様な余の身として甚だ聞き捨て難い所がある、此奴め
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)