俚耳りじ)” の例文
茂太郎はその手引のつもりで先に立っていたが、弁信の語る平家なるものが、なにぶん俚耳りじに入らないで困ります。
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
この句が俚耳りじに入りやすいのも、全くこの思わせぶりのためで、俗人はこの種のえせ風流に随喜するかたむきがある。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
従って、スレザークの歌い振りには、甚だしく理智が勝って、俚耳りじに入りがたい渋さがある。スレザーク嫌いの必ずしも世に少くないのは恐らくそのためでもあろう。
しかも、鐵幹が口をいて發するもの、皆歌を成す。其短歌若干首、之をたたけば、聲、釣鐘の如し。世人曰く、不吉の聲なりと。鐵幹自ら以て、大聲は俚耳りじに入らずと爲す。
東西南北序 (旧字旧仮名) / 正岡子規(著)
所謂俚耳りじに入り易き表現ということを、便宜的に大衆的という云い方でとりあげていて、従来の通俗文学との間に、画すべき一線のありやなしやを漠とさせている点等にある。
文学の大衆化論について (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
然れども其の説くところおほむね卑近にして、俚耳りじに入り易きの故を以て、人之を俗物と称す。
国民と思想 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
しかし一歩退いて考えて見ると、かくまでに彼等が吾輩を軽蔑けいべつするのも、あながち無理ではない。大声は俚耳りじに入らず、陽春白雪の詩には和するもの少なしのたとえも古い昔からある事だ。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
これはいわゆる「大声不俚耳りじ
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
相手が極めて趣味低き者ならんには、趣味低き歌はこれを感動せしむる事あるべきも、趣味高き歌はかへつてこれを感動せしむるあたはず。いはゆる大声は俚耳りじに入らざる者なり。
人々に答ふ (新字旧仮名) / 正岡子規(著)