たすけ)” の例文
何とか口実をつけて逃げたいと思ふ矢先、突然横浜転任の命令を受けたのは、彼の身に取つては全く天のたすけであつた。
男ごゝろ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
あるひくだけて死ぬべかりしを、恙無つつがなきこそ天のたすけと、彼は数歩の内に宮を追ひしが、流にひたれるいはほわたりて、既に渦巻く滝津瀬たきつせ生憎あやにく! 花は散りかかるを
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
自ら善を積み、仁をかさね、忠孝純至の者でないかぎり、とても免れることはできない、まして普通一般の人民では天のたすけすくないから、この塗炭とたんに当ることがどうしてできよう、しかし
富貴発跡司志 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
さいわい闇夜やみよにて人通ひとどおりなきこそ天のたすけと得念が死骸しがいを池の中へ蹴落けおとし、そつと同所を立去り戸田様とださま御屋敷前を通り過ぎ、麻布あざぶ今井谷いまいだに湖雲寺こうんじ門前にで申候処
榎物語 (新字新仮名) / 永井荷風(著)