五抱いつかか)” の例文
前棒さきぼう親仁おやじが、「この一山ひとやまの、見さっせえ、残らずとちの木の大木でゃ。皆五抱いつかかえ、七抱ななかかえじゃ。」「森々しんしんとしたもんでがんしょうが。」と後棒あとぼうことばを添える。
栃の実 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
影のない大円柱は、低い黒雲への、悪魔のきざはしの様に、そそり立って、五抱いつかかえもあるその根本の所に、小さな二人の人間が、しょんぼりと話し合っていました。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
岩——の士族屋敷ではこの「ひげ」の生まれない前のもっと前からすでに気味の悪いところになっているので幾百年かたって今はその根方ねがた周囲まわり五抱いつかかえもある一本の杉が並木善兵衛の屋敷のすみッ立ッていてそこがさびしい四辻よつつじになっている。
河霧 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)