二葉亭ふたばてい)” の例文
二葉亭ふたばていの『浮雲』や森先生の『がん』の如く深刻緻密ちみつに人物の感情性格を解剖する事は到底わたくしの力のくする所でない。
正宗谷崎両氏の批評に答う (新字新仮名) / 永井荷風(著)
夜、新聞で見ると、長谷川はせがわ二葉亭ふたばてい氏が肺病で露西亜から帰国の船中、コロムボと新嘉坡シンガポールの間で死んだとある。去十日の事。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
即ち人の知る如く、初期に於ける我が国の自然主義は、独歩どっぽ二葉亭ふたばてい藤村とうそん啄木たくぼく等によって代表され、詩的精神の極めて強調されたものであった。
詩の原理 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
二葉亭ふたばてい歿後ぼつご坪内つぼうち、西本両氏とはかって故人の語学校時代の友人及び故人と多少の交誼こうぎある文壇諸名家の追憶または感想をい、集めて一冊として故人の遺霊に手向たむけた。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
かつて二葉亭ふたばていといっしょに北の方を旅行して、露西亜人ロシアじんひどい目にったと話した。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「矢ツ張り、實感によつて、實感の眞劍勝負なる文藝でなければならない。」と思ふと、死んだ二葉亭ふたばてい硯友社けんいうしや派的な遊戲文學者、餘裕文學者等と相伍するを嫌つたのは、今更ら卓見たくけんであつたのだ。
泡鳴五部作:05 憑き物 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
二葉亭ふたばていとは親同士が同僚であって、小学時代からの友人であったが、中年以後は全く疎隔して音信不通であった。文壇人とは誰とも面識があったが、親友というものは殆んど一人もなかったようだ。
美妙斎美妙 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)