乳汁ちゝ)” の例文
かうして乳汁ちゝの洗眼が行はれた。それがどれ程の間続けられたか、ほんの一二秒位のことのやうでもあつたしまた大変長いことのやうにも感ぜられた。
乳の匂ひ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
「泊つて行きなはるか。……久し振りや、阿母おかあさんの乳汁ちゝ可味おいしおますで。」と千代松は微笑みつゝ言つて、背後うしろすくんでゐる竹丸を母の前へ引き出さうとした。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
主人は髭の伸びた、まだ乳汁ちゝの附いてゐる赤い口をしてゴルゴオに接吻する。都の手振は忘れ、葱の香には構はなくなつてゐる。そんな時は無言のルカスが片隅で泣いてゐる。
其年九月のはじめ安産あんざんしてしかも男子なりければ、掌中てのうちたまたる心地こゝちにて家内かないよろこびいさみ、産婦さんふすこやか肥立ひだち乳汁ちゝも一子にあまるほどなれば小児せうに肥太こえふと可賀名めでたきなをつけて千歳ちとせ寿ことぶきけり。