両蓋りょうぶた)” の例文
胴のふくらんだ恐ろしく大きな両蓋りょうぶたの金時計を引っ張り出し、蓋をあけてちょっと見ると、また同じく大儀そうにのろのろと、もとの所へしまい込んだ。
中が四つに仕切って高いボツボツが出て両蓋りょうぶたになっているがこの鍋はまだ滅多めったに売っていない。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
彼女は夫の顔色には頓着とんじゃくなく、七宝しっぽう入りの両蓋りょうぶたの時計をキラリと胸のところで開いた。
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
こまやかに刻んだ七子ななこ無惨むざんつぶれてしまった。鎖だけはたしかである。ぐるぐると両蓋りょうぶたふちを巻いて、黄金こがねの光を五分ごぶごとに曲折する真中に、柘榴珠ざくろだまが、へしゃげた蓋のまなこのごとく乗っている。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)