世路せろ)” の例文
平素その心を失はずば半生世路せろの辛苦は万巻の書を読破するにもまさりて真に深く人生に触れたる雄篇大作をなすもといともなりぬべし。
小説作法 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
そんな熾烈しれつな望みはおろか会わない間の辛さ、世路せろにまよう身のかなしさ、武蔵のつれないこと——なに一つとしていえないのだった。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お袖はかえって人の手に病もえ、その代り、身は転々と世路せろのつらさをめて、早くから水茶屋の茶汲み女に売られたりした。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あやまちにせよここを開けば、窟中くっちゅうの魔王は、時をえたりと、人界へ躍りでて、世路せろのみだれは申すもおろか、人間の智恵、内臓のうちにまでひそんで、長く取り返しもつくまいぞ
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし宋朝そうちょうの治、徽宗きそう帝のおごり、ようやくそのみだれやら腐敗を世路せろの辻々にまでただらしてきたので、いずれも正業に生きる馬鹿らしさを思って、野性の自由をほしいままに
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)