不束者ふつゝかもの)” の例文
男優E あの、わたくしのやうな不束者ふつゝかものでも、奥様の御意に叶ひませば、命に代へて御奉公をいたさうと覚悟いたしてをります。
職業(教訓劇) (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
瀧「はい左様でございますか、始めて拝顔を得ましてかたじけのう存じます、わたくしは瀧村と申します不束者ふつゝかものうかよろしゅう」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
老中方の御印文ごいんもんすわらぬうちはお処刑には相成らぬぞ、其の方公儀の御用を相勤め居った龜甲屋の手代をいたしながら、其の儀相心得居らぬか、不束者ふつゝかものめが
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
蘭「それについて私も種々いろ/\心配して居る事があるので私の様な不束者ふつゝかもの御意ぎょいらぬか知れないけれども、去年の十一月からさっぱりお宅へお帰りがないの」
清「イエ何う致しまして誠に不束者ふつゝかもので、屋敷育ちでとん町家まちや住居すまいを致した事がないので様子あいを一向に心得ませんから皆様に不行届勝ちで、それに一体無口で」
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
飯「あれから孝助に話しましたところ、当人も大層に悦び、わたくしの様な不束者ふつゝかものをそれ程までに思召おぼしめし下さるとは冥加至極みょうがしごくと申してナ、大概あらかた当人も得心いたした様子でな」
此のたびはもうこれがおわかれで、お萓は御存じの通りほかに身寄もなき不束者ふつゝかものうぞ幾久しゅう、お萓や見棄てられぬように気を付けなよ、それでも文治の嫁が思ったより優しいので
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)