不得已やむをえず)” の例文
この玄関払の使命をまとうしたのがペンである。自分は嘘をつくのは嫌だ。神さまに済まない。然し主命しゅうめいもだし難しで不得已やむをえず嘘をついた。
漱石氏と私 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
昨年来蘭軒医談遺板に付て補刊仕ほかんつかまつり、前の板下書候梶原平兵衛も既に歿後、不得已やむをえず拙筆にて補板仕候。(中略。)外に以呂波字源考一冊、詩史顰ししひん一冊、共に上木仕候。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
右の如く謡曲会、俳句会、短歌会、新体詩会等、会の連発にて当分の間は、のべつ幕無しに出勤致しそろ為め、不得已やむをえず賀状を以て拝趨はいすうの礼に候段そろだん不悪あしからず御宥恕ごゆうじょ被下度候くだされたくそろ。……
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
我輩がここに下宿したてにはしばしばペンの襲撃を蒙って恐縮したのである。不得已やむをえずこの旨を神さんに届け出ると可愛想にペンは大変御小言を頂戴した。
漱石氏と私 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
彼徒かのとこれを寛仮することあたはず、不得已やむをえず斬殺に及びしものなり。其壮烈果敢、桜田の挙にも可比較ひかくすべしこのゆゑいやしくも有義気ぎきある者、愉快と称せざるはなし。抑如此そも/\かくのごとき事変は、下情の壅塞ようそくせるより起る。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
「廿一日。晴。不得已やむをえず強訴之者打払之令出、近郷迄兵隊罷出警衛相成候。」
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)