下見したみ)” の例文
僕は主人の案内でひととおり牛の下見したみをする。むろん巡査がひとりついてくる。牛疫の牛というのは黒毛の牝牛赤白斑まだらの乳牛である。
去年 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
お磯の身売りについて、お葉は玉の下見したみに行った。その帰りの船が次郎兵衛と一緒であったので、互いに心安くなった。
『五月も近いので、加茂の下見したみに行らっしゃるのであろう。諸国の馬が、たくさんに、のぼったからの』
屋根の破風はふ下見したみをすこしばかり毀しますから、窮屈でもどうかそこからお入りなすってください
顎十郎捕物帳:24 蠑螈 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
上滝かうたきのお父さんの命名なりと言へば、一風いつぷう変りたる名を好むは遺伝的趣味の一つなるべし。書は中々たくみなり。歌も句も素人しろうと並みに作る。「新内しんない下見したみおろせば燈籠とうろかな」
学校友だち (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
開拓使時分に下級官吏の住居として建てられた四戸の棟割長屋ではあるが、亜米利加アメリカ風の規模と豊富だった木材とがその長屋を巌丈がんじょうな丈け高い南京下見したみの二階家に仕立てあげた。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
老人の説だと、関東は横なぐりの風雨が強いので、家の外側はみな板がこいの下見したみにする。しかもその板がどんな上等な木を使っても直きに黒くよごれてしまうから全体が非常にきたない。
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
大体出来あがって、その下見したみが行われたとき、伸子もついて行った。
道標 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
下見したみですよ」
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
このたびの帰省は、新たに、右馬允うまのすけに任官した歓びをこの老父に告げるためと、今春の御馬上おんうまのぼせの貢馬みつぎうまを、東国の各地の牧に、下見したみするための公用の途次との事です。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこの下見したみの節穴へ、写し絵の種板のようなものをおしあててニヤリと凄い顔で笑う。
顎十郎捕物帳:15 日高川 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)