上物じょうもの)” の例文
料理も美味うまい物好き、よい物好き、なにかと上物じょうもの好き、いわばぜいたく者であってこそ、筋の通った料理が生まれるのである。
味覚馬鹿 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
味噌を選ぶは勿論もちろん、ダシに用ゐる鰹節かつおぶしは土佐節の上物じょうもの三本位、それも善き部分だけを用ゐる、それ故味噌汁だけのあたい三円以上にも上るといふ。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
竿は二本継にほんつぎの、普通の上物じょうものでしたが、継手つぎて元際もとぎわがミチリと小さな音がして、そして糸はえなくれてしまいました。
幻談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
貴様の作った人形の顔が上物じょうものになればなる程、中村半太夫に似ていることも、そこに居った人の噂で初めて気が付いた。
押絵の奇蹟 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
泥地は胡粉ごふんにかわで下地を仕上げ、漆で塗ったまま仕上げ、研がないのです。泥地でも上物じょうものは中塗りをします。
ただ白石の紙布は上物じょうものでありますけれども、余りに細かい技に陥ってかえって紙布としてのあじわいを欠くともいえましょう。それに高価に走るの弊を免れません。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
私の作った椅子は、どんな難しい註文主にも、きっと気に入るというので、商会でも、私には特別に目をかけて、仕事も、上物じょうものばかりを、廻してれて居りました。
人間椅子 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「——奥ジマ十反、潮かぶりは一反もない上物じょうものだ」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
上物じょうものを好み好みにわけて店から頼んで参りますので、二月も末になりますと、お母様のお忙がしさは眼に余るようで、徹夜をなさる事も珍らしくありませんでしたので
押絵の奇蹟 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
東京では埼玉の越ヶ谷辺こしがやあたり地黒じぐろというどじょうが上物じょうもので大きく、以前、うなぎの大和田おおわだあたりで盛んに蒲焼きにして、「どかば」と称して、一時人気を呼んだものである。
一癖あるどじょう (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
……日本内地では麻雀賭博が流行はやり出したかね。そんで密輸入の上物じょうものが売れ出した。つまり日本の麻雀が本格になりかけているんだね。今に支那式のルールが復活する……そうかねえ。
焦点を合せる (新字新仮名) / 夢野久作(著)
上物じょうもの寿司屋を発見することは、お客にとってまた苦労のタネである。
握り寿司の名人 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)