一部始終いちぶしじゅう)” の例文
「で御兄おあにいさんに、御目にかかっていろいろ今までの御無沙汰ごぶさた御詫おわびやら、何やらして、それから一部始終いちぶしじゅうの御話をしたんです」
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その一部始終いちぶしじゅうが崇徳院のおっしゃった言葉に少しもちがわなかったのは、おそろしくもまた不思議なかたりぐさであった。
その男はどういうふうにしてわたくしの赤んぼうをぬすみ出して、パリへれて行き、そこへてたか、その一部始終いちぶしじゅうべました。これがわたくしの子どもの着ておりました着物でございます。
須永すながと彼の従妹いとことそれから彼の叔父に当る田口とを想像の糸で巧みにぎ合せつつある一部始終いちぶしじゅう御馳走ごちそうに、晩まで話し込む気でいたのである。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そりゃ御約束した事ですから、ねえさんについて、あの時の一部始終いちぶしじゅうを今ここで御話してもいっこう差支さしつかえありません。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
嫂は蒲団ふとんの上にすわって茶をすすっていたが、自分の足音を聴きつつふり返って、「電話はどうして? 通じて?」と聞いた。自分は電話について今の一部始終いちぶしじゅうを説明した。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
始めて越後えちごを去る時には妻君に一部始終いちぶしじゅうを話した。その時妻君はごもっともでござんすと云って、甲斐甲斐かいがいしく荷物の手拵てごしらえを始めた。九州を去る時にもその顛末てんまつを云って聞かせた。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
小六から一部始終いちぶしじゅうを聞いた時、宗助はただ弟の顔をながめて、一口
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)