一翳いちえい)” の例文
ああ、一翳いちえいの雲もないのに、緑紫くれないの旗の影が、ぱっと空をおおうまで、花やかに目に飜った、と見るとさっと近づいて、眉に近い樹々の枝に色鳥の種々いろいろの影に映った。
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ただ一翳いちえい眼にって空花乱墜くうげらんついするが故に、俗累ぞくるい覊絏牢きせつろうとしてちがたきが故に、栄辱得喪えいじょくとくそうのわれにせまる事、念々切せつなるが故に、ターナーが汽車を写すまでは汽車の美を解せず
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あゝ、一翳いちえいの雲もないのに、みどりむらさきくれないの旗の影が、ぱつと空をおおふまで、はなやかに目にひるがえつた、見るとさっと近づいて、まゆに近い樹々の枝に色鳥いろどり種々いろいろの影に映つた。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)