一条ひとくだり)” の例文
旧字:一條
僕は下女に金をもらった覚えはないが、財布の一条ひとくだりは実地の話だった。僕の幼友おさなともだちで今、名を知られている人は、山口弘一という人だけだ。
僕の昔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「それにつきては一条ひとくだりのもの語りあり、われもこよいはなにゆえかいねられねば、起きて語り聞かせん」とうべないぬ。
文づかい (新字新仮名) / 森鴎外(著)
松任まっとうより柏野水島などを過ぎて、手取川を越ゆるまでに源平島と云う小駅あり。里の名にちなみたる、いずれ盛衰記の一条ひとくだりあるべけれど、それはいまだ考えず。
一景話題 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
(私には限らない、当時の貸本屋フワンは誰でもだったが)信乃しの滸我こがへ発足する前晩浜路はまじが忍んで来る一節や、荒芽山あらめやま音音おとねの隠れ家に道節どうせつ荘介そうすけが邂逅する一条ひとくだり
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
「それにつきては一条ひとくだりのものがたりあり、われもこよひは何ゆゑかいねられねば、起きて語り聞かせむ。」とうべなひぬ。
文づかひ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
晃 くわしい事は、夜すがらにも話すとして、知ってる通り……僕は、それ諸国の物語を聞こうと思って、北国筋を歩行あるいたんだ。ところが、自身……僕、そのものが一条ひとくだりの物語になった訳だ。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
声のあやに、我を忘れて、道成寺の一条ひとくだりの真紅の糸が、鮮麗あざやかに織込まれた。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)