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ぢよしやう
築地二丁目の待合「浪の家」の帳場には、
女将お才の
大丸髷、頭上に
爛めく電燈目掛けて
煙草一と吹き、
長へに
嘯きつゝ「議会の解散、戦争の
取沙汰、此の
歳暮をマア
何うしろツて言ふんだねエ」
襖スウと
開いて顔を見せしは、——
女将のお才「どうも松島さん、御気の毒様ですことねエ、
是も
流行妓を
情婦にした
刑罰ですヨ、——待つ身のつらさが
御解になりましたでせう、ホヽヽヽヽヽ」
如何にも
世帶染みた、商賣の
懸合でもするやうな
風であつたので、小池はこの時初めて
女將としてのお光を見たと思つた。