風車かざぐるま)” の例文
それが一色いつしきになつてまはる。しろい棺は奇麗な風車かざぐるま断間たえまなくうごかして、三四郎の横を通り越した。三四郎はうつくしいとむらひだと思つた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
船の両側にすさまじい濁流が巴渦を巻き出した。風車かざぐるまが見え出した。オランダを思はせるやうな赤煉瓦の古風の建物などもあらはれ出した。
(新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
敵将のこうべを挙げたるごとく、ずい、と掲げて、風車かざぐるまでも廻す気か、肌につけた小児しょうにの上で、くるりくるりとかざして見せたが
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そしてそのあひだ各地方かくちほうからそのまゝもつて農民のうみん小屋こやがあり、ふるしき教會堂きようかいどうがくれにつてゐるかとおもふと、面白おもしろ風車かざぐるまがあり
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
鉄道の上に架した橋を渡つて程なく左手に建つた第一の家がロダン先生の家である。木立こだちの上に風車かざぐるまの舞ふのが見えると教へてれた。十四五ちやう歩いた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
竹童はいまや必死のところ、かし棒切ぼうきれを風車かざぐるまのようにふって、燕作の真剣しんけんと火を飛ばしてたたかっているのだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とつぜん、さかうえから、おそろしい突風とっぷうが、やってきて、あっというまに、おんなのさしているがさをさらって、青空あおぞらたかく、風車かざぐるまのように、まきあげました。
道の上で見た話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
とつおいつ、頭を風車かざぐるまの様に急がしく働かせて、咄嗟の手段を考えている内に、五秒十秒と時がたった。
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ほう、まねえが、そんな無駄むだぜにがあるんなら、ちとこっちへまわしてもらいてえの。おれだのまつろうなんざ、貧乏神びんぼうがみ見込みこまれたせいか、いつもぴいぴい風車かざぐるまだ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
覺束おぼつかないつきに風車かざぐるまてゝせたり、りつゞみなどをつておせなされ、一家いつかうちわれなぐさめるは坊主ばうず一人ひとりだぞとあのいろくろいおかほをおあそばすと
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
もっともササラや風車かざぐるまや、タワシだのみのだのというようなものを、人里へ出て売りつけはしますが、それとて商売のためではなく、泥棒をするツテでございましてな
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
宝飯ほい郡の小坂井こざかいにある菟足神社うたりじんじゃで売る風車かざぐるまは甚だ味の富んだ郷土玩具の一つであります。三州の有名な花祭はなまつりに用いる「ざぜち」と呼ぶ切紙も見事な出来栄を見せます。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
風車かざぐるまあ、かあぜのう、まあにまあにめぐるなりいやあまずめえぐうるも、やあまず繞るうもう……」
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
そして、風車かざぐるまきりをこしらえて、小さなにじを飛ばして遊ぼうではありませんか。
双子の星 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
轢殺ひきころされた豚は白豚で、トンネルの洞門みたいな猪鼻が……どうです、主働輪の曲柄クランクにチョコナンと引ッ掛って、機関車が走る度毎に風車かざぐるまの様にクルリクルリと廻ってるじゃあ有りませんか。
とむらい機関車 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
和蘭陀オランダ風車かざぐるま小屋の沢山並んだ野を描いた褐色の勝つた風景画は誰が悪戯いたづらをしたのか下の四分通りが引きちぎられてました。私の父はまた色硝子いろがらすをいろいろ交ぜた障子を造つてえんへはめました。
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
聖天下しょうでんした裏店うらだなにもぐり込んで、風車かざぐるまや蝶々売りをやっているそうです。
半七捕物帳:56 河豚太鼓 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「七年……」と口の中で繰り返して私は額に手を当てた、この家中に充ち満ちている不思議さ……怪しさ……気味わるさ……が一時に私に襲いかかって頭の中で風車かざぐるまのように回転し初めたからである。
あやかしの鼓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
春雨霏々ひひ。病牀徒然とぜん。天井を見れば風車かざぐるま五色に輝き、枕辺を見れば瓶中へいちゅうの藤紫にして一尺垂れたり。ガラス戸の外を見れば満庭の新緑雨に濡れて、山吹は黄ようやく少く、牡丹は薄紅うすくれないの一輪先づ開きたり。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
沖はええ、沖はてるてる、風車かざぐるまは廻る、磯の神明様しんめいさま片時雨かたしぐれ
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
十間じっけん余りの尾を風車かざぐるまのごとくに
鬼桃太郎 (新字新仮名) / 尾崎紅葉(著)
風車かざぐるま夕日に燃えてまはりをり
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
くるくるまはれ風車かざぐるま……
一点鐘 (旧字旧仮名) / 三好達治(著)
風車かざぐるまの利用
話の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
=でんでん太鼓にしょうの笛、起上り小法師こぼし風車かざぐるま==と唄うを聞きつつ、左右に分れて、おいおいに一同入る。陰火全く消ゆ。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
小供の葬式がた。羽織をた男がたつた二人ふたりいてゐる。さい棺は真白なぬのいてある。其そばに奇麗な風車かざぐるまひ付けた。くるまがしきりにまはる。くるま羽瓣はねが五しきつてある。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
こし手拭てぬぐいをとって風車かざぐるまにまわしながら、一汗ひとあせふいて、またもやあとからかけだした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だが、頭の中では、錯雑した想念のアラベスクが、風車かざぐるまの様に廻転していた。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
年目ねんめにはわたしところにもお目出めでたうを他人ひとからははれて、犬張子いぬはりこ風車かざぐるまならべたてるやうりましたれど、なんのそんなことわたし放蕩のらのやむことか、ひとかほ女房にようぼたせたらあしまるか
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
風車かざぐるまに、はたに、風鈴ふうりんなんかですね。」
新しい町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「それがら、風車かざぐるまもぶっさな。」
風野又三郎 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
あまりの風車かざぐるまのごとくに
鬼桃太郎 (旧字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
風車かざぐるまめぐる草家くさや
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
張子はりこの顔や、練稚児ねりちご。しゅくしゃ結びに、ささ結び、やましな結びに風車かざぐるま。瓢箪に宿る山雀、胡桃くるみにふける友鳥ともどり……
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そのそばにきれいな風車かざぐるまいつけた。車がしきりに回る。車の羽弁はね五色ごしきに塗ってある。それが一色いっしきになって回る。白い棺はきれいな風車を絶え間なく動かして、三四郎の横を通り越した。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
えて一トつき雲黒くもくらつきくらきゆふべ、らう居殘いのこりの調しらものありて、いゑかへりしはくれの八いつもうすくらき洋燈らんぷのもとに風車かざぐるま犬張子いぬはりことりちらして、まだ母親はゝおや似合にあは美尾みをふところおしくつろげ
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
大人だいにん国の風車かざぐるまの様に、グルグル廻り、浅草の十二階めいた摩天閣からは、場内の四方に万国旗が張りめぐらされ、その窓々には、真赤な旗が、首を出して、ユラリユラリと、火焔かえんの様に燃えていた。
地獄風景 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
というふうにむねをひろげて、また手拭てぬぐい風車かざぐるまにまわした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
をりからせなに、御新造ごしんぞ一人いちにん片手かたて蝙蝠傘かうもりがさをさして、片手かたて風車かざぐるまをまはしてせながら、まへとほきぬ。あすこが踏切ふみきりだ、徐々そろ/\出懸でかけようと、茶店ちやてんす。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
なか/\、まだこれでもぼつちやんさへ御承知下ごしようちくだされば、くるま此處こゝ打棄うつちやつて、猿抱負さるおんぶおぶまをして、友造ともざうふんどしひもとほした天保錢てんぱうせんで、風車かざぐるまつておたせまをしたうござります。
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あたかもきたるものを愛するごとく、起きると着物を着更きかえさせる。抱いて風車かざぐるまを見せるやら、懐中ふところへ入れて小さな乳を押付おッつけるやら、枕をならべて寝てみるやら、余所目よそめにはまるで狂気きちがい
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
やがて貴僧あなた風車かざぐるまのように舞う、その癖、場所は変らないので、あれあれと云う内に火が真丸まんまるになる、と見ている内、白くなって、それに蒼味あおみがさして、ぼうとして、じっすわる、そのいやな光ったら。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「持って来い、さあ、何んだ風車かざぐるま。」
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)