踏込ふみこ)” の例文
ズボリと踏込ふみこんだ一息ひといきあひだは、つめた骨髓こつずゐてつするのですが、いきほひよく歩行あるいてるうちにはあたゝかります、ほか/\するくらゐです。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
道に迷って踏込ふみこんだ者が、殺生谷の泥深い底無し沼へはまりこんで、惨めな死を遂げる事もすくなくはない、——村の人たちは是を
殺生谷の鬼火 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「寅藏ならあの玄翁げんのうも振り廻せるし、おこのが隣で油を賣つて、暗くなつてから歸つて來ることも知つて居る。——踏込ふみこんで擧げませうか」
市郎は窟へ五六歩踏込ふみこんだが、奥は暗いので何にも見えなかった。お杉は黙って窟の入口に立っていた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ねぢ鉢卷はちまき大萬燈おほまんどうふりたてゝ、あたるがまゝの亂暴狼藉らんぼうらうぜき土足どそく踏込ふみこ傍若無人ぼうじやくぶじんざすかたき正太しようたえねば、何處どこかくした、何處どこげた、さあはぬか、はぬか
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
高手小手たかてこてに縛り上げて割下水わりげすいどぶへ打込んだという話を聞き、義憤むら/\と発して抑え難く、ついに蟠龍軒の道場へ踏込ふみこみ、一味加担の奴ばらを打殺し、大伴だけ打漏うちもらして
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ぢいげおちやえべえ」おつぎはつて茶碗ちやわんあらつた。卯平うへい濃霧のうむふさがれたもりなか踏込ふみこむやうな一しゆ不安ふあんかんじつゝたのであつたが、かれはおつぎの仕打しうちこゝろ晴々せい/\した。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「田鍋さん。あの女はやっぱり猫又ねこまたを隠していたんですよ。そして博士の人形を作ったり、その他へんな装置をつけたりして、一体何をするのか、このへんで中へ踏込ふみこんだら、どうです」
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
うだ名譽めいよ大切たいせつだ。全體ぜんたい這麼町こんなまちあし踏込ふみこんだのが間違まちがひだつた。』と、かれさらにドクトルにむかつてふた。『じつわたしけたのです。で、奈何どうでせう、ぜにを五百ゑんしてはくださらんか?』
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「あの野郎はあつしの鼻を明かせるつもりですよ。何もわざ/\肥桶臭こえたごくさえ村から、神田三河町まで踏込ふみこんで來なくたつて宜いぢやありませんか」
うへからなぞは、とおもひながら、せばいゝのに、——それでも草履ざうり遠慮ゑんりよしたが、雪靴ゆきぐつ穿いた奥山家おくやまが旅人たびびとで、ぐい、と踏込ふみこむと、おゝつめたい。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ここらの町家まちやは裏手に庭や空地あきちっているのがならいであるから、巡査等は同家どうけ踏込ふみこんでず裏庭を穿索せんさくした。が、縁の下にも庭の隅にも重太郎の姿は見えなかった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
と御前の座敷へ踏込ふみこみ、何やら難題を吹掛ふっかけましたので、松平の殿様も弱り果て
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
『そうだ名誉めいよ大切たいせつだ。全体ぜんたいこんなまちあし踏込ふみこんだのが間違まちがいだった。』と、かれさらにドクトルにむかってうた。『じつわたしけたのです。で、どうでしょう、ぜにを五百えんしてはくださらんか?』
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
高塚蔵人の一刀は、三文字紋弥にたった一合を許しただけ、踏込ふみこんだ二の太刀は見事紋弥を袈裟掛に斬って、主君大膳正の死骸と並べたのです。
わたし一人ひとり、おれぢやあない、おれぢやあない、と、戸惑とまどひをしてたが、しなに、踏込ふみこんだに相違さうゐない。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
これで思わず手をゆるめる隙を見て、彼は一足踏込ふみこんで当のかたきの市郎に突いてかかると、対手あいては早くもね起きて、有合ありあよぎを投げ掛けたので、小さい重太郎は頭から大きい衾をかぶって倒れた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
不肖なれども理非のわきまえはございます、お上様かみさまを弄ぶなどとはもってのほかの仰せでございます、かく申す文治、捨置きがたい仔細あって蟠龍軒を殺害せつがいいたすの覚悟にて、同人屋敷へ踏込ふみこみ候ところ
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
鑄掛屋權次の家へ踏込ふみこんで、ひとわたり家搜しした平次は、さすがに呆れ返つてほこりだらけになつた手を叩きました。
……一度いちど職人しよくにんいへ節分せつぶんいそがしさに、わたし一人ひとりて、したがけを踏込ふみこんだ。一度いちど雪國ゆきぐにでする習慣ならはしれた足袋たびを、やぐらにしたひもむすびめがけてちたためである。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
今夜客間に寝ている源次郎めがちゅう二階に寝ているお國の所へ廊下伝いに忍びくに相違ないから、廊下で源次郎を槍玉やりだまにあげ、中二階へ踏込ふみこんでお國を突殺つきころし、自分は其の場を去らず切腹すれば
踏込ふみこんで、その佐太郎を縛つたものでせうか、金森家を浪人すれば、もう遠慮はありませんぜ」
土地とち名所めいしよとはひながら、なか/\もつて、案内者あんないしやれて踏込ふみこむやうな遊山場ゆさんばならず。双六盤すごろくばんこと疑無うたがひなけれど、これあるは、つきなか玉兎ぎよくとのある、とおんなこと、と亭主ていしゆかたつた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そこへ草鞋わらぢ踏込ふみこんでおあたんなさいまし。
台場だいば停車場ステエションから半道はんみちばかり、今朝けさこの原へかゝつた時は、脚絆きゃはんひも緊乎しっかりと、草鞋わらじもさツ/\と新しい踏心地ふみごこち、一面に霧のかゝつたのも、味方の狼煙のろしのやうにいさましく踏込ふみこむと、さあ、ひとひと
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
送込おくりこんだ……とふよりは、づか/\踏込ふみこんだ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
づか/\踏込ふみこまうとすると
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)