あらかじ)” の例文
新字:
この遊歩いうほあひだ武村兵曹たけむらへいそうめいずるまゝに、始終しじゆう吾等われらまへになり、うしろになつて、あらかじ猛獸まうじう毒蛇どくじや危害きがいふせいでれた、一頭いつとう猛犬まうけんがあつた。
りたけとほはなれて、むかがはをおとほんなさい。なんならあらかじ用心ようじんで、ちやううして人通ひとゞほりはなし——かまはず駈出かけだしたらいでせう……
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
是故にこの弓の射放つものは、みなあらかじめ定められたる目的めあてにむかひて落ち、あたかも己がまとにむけられし物の如し 一〇三—一〇五
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
これを頭韻とういんといつて、日本につぽんうたでは、あらかじ計畫けいかくしてかういふことをするのはすくないが、偶然ぐうぜんこんなかたち出來できることがあります。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
こう云う事もあろうかと考えて、しも時間に余裕があったら、その間に先へ廣小路の方へ行って来ようと、あらかじ手筈てはずめて置いたのである。
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
冬時とうじこのかは灌水くわんすゐおこなふには、あらかじ身體しんたいるゝに孔穴こうけつこほりやぶりてまうき、朝夕あさゆふこの孔穴こうけつぼつして灌水くわんすゐおこなふ。
命の鍛錬 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
「それはさうだけれど……。」母は老いてはゐても、まだ目の前に迫つてもゐない死際の苦しみを今からあらかじめ苦しんでかゝるほど餘裕のない人間ではなかつた。
仮面 (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
かくてこそわれは晝間の接吻に報い得つるなれ。若し彼女主人にしてあらかじめ守護の功を測り知りたらんには、かれは猶一たび接吻することをも辭せざりしなるべし。
そして内から戸締りをして、あらかじめ見定めて置いた、床下の道を潜つて歸つたといふ段取りではないか
僕はあらかじめ云つて置くが、あの女もまたこれまで通りにするか、それとも矢ツ張り手を
彼等はそんな場所でものを言ひ合ふことをあらかじめ禁じてゐたのである。
天国の記録 (旧字旧仮名) / 下村千秋(著)
それから入窟にふくつ順序じゆんじよあらかじさだめた。
たまたま! 赫奕かくやくたる明星みやうじやう持主もちぬしなる、(おう)の巨魁きよくわい出現しゆつげんじゆくして、天公てんこう使者ししやくちりて、あらかじいんをなすものならむか。
蛇くひ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
是故にいかなるわざはひのわが身にせまるやを聞かばわが願ひ滿つべし、これあらかじめ見ゆる矢はその中る力弱ければなり。 二五—二七
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
無論むろん縁起的えんぎてきには、其樣そんことしんぜられぬが、かの亞尼アンニーとかいへる老女らうぢよは、なにかの理由わけで、海賊船かいぞくせん弦月丸げんげつまるねらつてことをば、あらかじつてつたのかもれぬ。
この事件が始まる前、平次はあらかじめ本草學者に就いて、不孝長生の藥を調べてゐたのです。
あらかじめしつらえて置いた寝殿の奥の一と間に住まわせて寵愛ちょうあいしたので、翌年には早くも後の中納言敦忠である男子を生むに至り、遂には世人も此の夫人を貴んで「本院の北の方」と呼ぶようになった。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
されど何故に汝のともき汝ひとりあらかじめ選ばれてこのつとめを爲すにいたれるや、これわが悟りがたしとする所なり。 七六—七八
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
の一日前にちまへ暮方くれがたに、千助せんすけは、團右衞門方だんゑもんかた切戸口きりどぐちから、庭前ていぜん𢌞まはつた。座敷ざしき御新姐ごしんぞことを、あらかじつてのうへ
片しぐれ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
下手人はあらかじめ窓の戸に細工をして、外から入つたとしても、相模屋は貧乏酒屋だつた昔から、世間の評判の良い店で、人にうらまれる筈もなく、一番よく相模屋の世話をして居る隣りの地主で
これはあらかじめ時平が帝としめし合わせてしたことなのであった。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
の一日前にちまへ暮方くれがたに、元二げんじ團右衞門方だんゑもんかた切戸口きりどぐちから庭前にはさき𢌞まはつた、座敷ざしき御新造ごしんぞことあらかじつてのうへで。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
大方おほかたくあらむと、したることとて、民子たみこあらかじ覺悟かくごしたから、茶店ちやみせ草鞋わらぢ穿いてたので、此處こゝ母衣ほろから姿すがたあらはし、山路やまぢゆき下立おりたつと、爪先つまさきしろうなる。
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
不※ふと獨言ひとりごとのやうに、なにかの前兆ぜんてうあらかじつたやうにをんなふ。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)