)” の例文
旧字:
然るにこの書籍を積んだ舟が、航海中七月九日に暴風に遭って覆って、抽斎のかつて蒐集しゅうしゅうした古刊本等の大部分が海若かいじゃくゆうした。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
その原因を、わが研究室の宇宙線にすることは、きわめて自然であると思う。無論読者においても賛成せられることであろう。……
(新字新仮名) / 海野十三(著)
そうなると、湯屋に取っては菖蒲や柚代だけが全然損失にするわけになるので、どこの湯屋でもたくさんの菖蒲や柚を入れない。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
とかく金に限らず、位置でも名誉でもおのれにするときは、油断をすれば逆上ぎゃくじょうしてこれを利用するを忘れてただ濫用らんようおちいりやすい。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
勝家は、玄蕃允へ、六回もやった使者が、ついに全くの徒事とじして、怏々おうおうとして楽しまず、万事休す——とまで歎じていた。そして
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まずこの話の要点は、人間というものは、何処の国でも、またいつの時代でも、そうひどく変っているものではない、というところにする。
パーティ物語 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
誰にすべきものであるか知れないが……その時に行方不明になった若干の軍用金が、ここの問題になる金なのであります。
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
これらすべてさえもう直ぐ嘗てあったことにそうとしているという絶望的な意識、それらは伸子に呼吸の止るような苦悩を与えるのであった。
伸子 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
意表にでて後ろの源十郎へ一なぎくれたかと思うと、このときはもう慕いよる半月形の散刀に対して、無念無想むねんむそう、ふたたび静にした不破ふわの中青眼。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
私はそれをKに対する私の嫉妬しっとしていいものか、または私に対するお嬢さんの技巧と見傚みなしてしかるべきものか、ちょっと分別に迷いました。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
すでに学校に心をすれば、門閥もんばつの念も同時に断絶してその痕跡こんせきを見るべからず。市学校は、あたかも門閥の念慮ねんりょ測量そくりょうする試験器というもなり。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
それがおそろしく変形して厚い多肉部が生じ種子はまったく不熟ふじゅくして、ただ果実の中央にやわらかい黒ずんだ痕跡こんせきを存しているのみですんでいる。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
燕王自らその縛を解いて曰く、皇考の霊、なんじもって我に授くるなりと。って兵を挙ぐるの故を語る。成感激して心をし、ついに世子をたすけて北平を守る。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
いつしかおつ軍勢ぐんぜい国境こっきょうえてわがくにかえり、とうとうこの戦争せんそうは、こう勝利しょうりしてしまいました。
酒倉 (新字新仮名) / 小川未明(著)
で、そのところついに一つことにしてしまう。まち生活せいかつするのはこのましくい。社会しゃかいには高尚こうしょうなる興味インテレースい。社会しゃかい瞹眛あいまいな、無意味むいみ生活せいかつしている。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
狐が農作の神のごとく一般に崇祀すうしせられている起原は、ようやく不明にしかけているが、それが我々の仲間の採訪によって幸いに湮滅いんめつを防ぐことができた。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
結果の成否は考えずに、ただ、試みるために全力を挙げて試みよう。決定的な失敗にしたっていいのだ。
悟浄出世 (新字新仮名) / 中島敦(著)
もう世界の信仰はエホバでもなければ、アラアでもない。カメレオンにしたとも云われるくらいです。
不思議な島 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
その頃から旅に出たり、都でも転々と居を移し、永享元年(四十九)『徹書記物語』を書き、永享四年(五十二)には火災にあって、歌稿二万七千首を烏有うゆうした。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
なにもかもが灰燼かいじんして、ただ玄関の三和土たたきに置いてあった傘桶だけが焼け残っていた。広場の池には、ふくれあがった死体がいっぱい浮んでいた。私は吐きそうになった。
生い立ちの記 (新字新仮名) / 小山清(著)
ひとえぐられては半身はんしんをけづりられたもおなことこれがために、第一だいいちさく不用ふようした。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
左内つらつら一五七夜もすがらの事をおもひて、かの句を案ずるに、百姓ひやくせい家にすの句、一五八ほぼ其のこころを得て、ふかくここに一五九しんおこす。まことに一六〇瑞草ずいさうの瑞あるかな。
するところは同じだが、このまえ、富士男が探検たんけんした話をきみは忘れはしまい。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
こうわたとき蛟龍かうりようふねを追ふ、舟中しうちゆうひとみなおそる、天を仰いで、嘆じていはく、われめいを天にく、力を尽して、万民を労す、生はなり、死はなりと、りようを見る事、蜿蜓えんていの如く、眼色がんしよくへんぜず
母となる (新字旧仮名) / 福田英子(著)
教の人における、一日もなかるべからず。飽食・暖衣・逸居いっきょして教なきは、禽獣に近し。教の政における、そのいつなり。われきく、文明の国たる、王家大礼あれば必ず教師をひきてこれをつかさどらしむ。
教門論疑問 (新字新仮名) / 柏原孝章(著)
実に、手剛てごわい。僕たちの悪計もまさに水泡すいほうするかのごとくに見えた。
未帰還の友に (新字新仮名) / 太宰治(著)
悪いものは、これを適当に感化誘導して、正にせしむべきである。
水荘の嫦娥じやうがよすでに天上にしつる君をわれ見たりけん
と会長は会の衰微を会員の不熱心にしていた。
田園情調あり (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
嵐に勝ってた男に妻がゐる
鶴彬全川柳 (新字旧仮名) / 鶴彬(著)
幕府を廃し、武家を政治から無力にし、すべてを天皇のもとすというのが後醍醐の一貫した御方針。いや王政としてじっさいにもうかれている。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
光仙林をお銀様の手にせしめたのも不破の関守氏、これを根拠地として、お銀様をして、何事をかさしめんとするのも不破の関守氏であります。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
けだし廃藩以来、士民がてきとしてするところを失い、或はこれがためその品行をやぶっ自暴自棄じぼうじき境界きょうがいにもおちいるべきところへ、いやしくも肉体以上の心を養い
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
しかし生れて三十余年の今日こんにちに至るまでいまだかつて、かかる表情を見た事がない。美術家の評によると、希臘ギリシャの彫刻の理想は、端粛たんしゅくの二字にするそうである。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それには「汝に魚の銭をす」と書いてあった。劉はますます奇異の感を深うして、瓜洲かしゅうに僧侶をあつめて読経をしてもらった上に、かの銭はみな施して帰った。
近時理想ということが一つの流行語になり、成功せいこうはいうにおよばず失敗をも理想にする傾向がある。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
その父は胡人こじんだが、ゆえあって衛律は漢の都で生まれ成長した。武帝に仕えていたのだが、先年協律都尉きょうりつとい李延年りえんねんの事にするのをおそれて、げて匈奴きょうどしたのである。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
これほどまでも草木くさきは人間の心事しんじに役立つものであるのに、なぜ世人せじんはこの至宝しほうにあまり関心をはらわないであろうか。私はこれを俗に言う『食わずぎらい』にしたい。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
人生には悽惨せいさんの気が浸透している。春花、秋月、山あり、水あり、あか、紫と綺羅きらやかに複雑に目もあやに飾り立てているけれど、するところ沈痛悲哀の調べが附纏つきまとうて離れぬ。
人が大陸から稲の種を携えて、この列島に渡って来たのも、たった一度の偶然ではなかったのかもしれぬが、結果は一つにするようだから、私は考えやすい方を考えてみる。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
我々われわれ到底とうてい合奏がっそう出来できません、わたくし貴方あなた信仰しんこうせしむるわけにはきませんから。』
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
長良川博士が、海底超人が異様な肢体を持つようになった原因の一つを、かれらが宇宙線を遮蔽しての四千年近くの生活にしたのは、けだし、まことに卓抜な意見だというべきである。
海底大陸 (新字新仮名) / 海野十三(著)
回徒多く帖木児チモルの領土にす。帖木児チモルの甘粛より入らんとせるも、故ある也。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
帰藩と同時に其刀それを献上におよび、左膳のものとなるべきはずだったあらゆる賞美と栄誉は、すべてこれ和田栄三郎のゆうする……と、お艶はいま、あけても暮れても海へ行った栄三郎の帰府と
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
夜と昼を集め無明むめいの闇に
鶴彬全川柳 (新字旧仮名) / 鶴彬(著)
中納言様と下手したてにばっかり出て来たが、あいつらは、岩倉三位、岩倉三位と、大きそうに出やがって練込んで行くが、結局、するところは一つで
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「一に仏法に帰依きえ、二に正法しょうぼう帰奉きほう、三に師友に帰敬。これを三という。……次の五戒とは、殺生、偸盗ぬすみ、邪淫、貪酒どんしゅ、妄語のことじゃ。守るか」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
単身たんしんさってその跡をかくすこともあらんには、世間の人も始めてその誠のるところを知りてその清操せいそうふくし、旧政府放解ほうかい始末しまつも真に氏の功名にすると同時に
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
おっとが外国で死んだ四ヵ月後の今日は当然欽吾の所有にしてしまった。魂胆はここから始まる。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼が捕虜をいて来たのは、単に其功名そのこうみょうを誇るが為では無かった。九州の戦闘たたかいに於て、最後の大勝利は幸いに我にしたけれども、初度しょど戦闘たたかい屡々しばしば我に不利益であった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)