龍胆りんどう)” の例文
新字:竜胆
ジーンと鳴いて行く秋の蝉、——側腹のあたりに、龍胆りんどうと梅鉢草が咲いているな——と思った切り龍之助は正気をうしなってしまいました。
大江戸黄金狂 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
その葉は龍葵りゅうきのようで味がきものようににがいから、それで龍胆りんどうというのだと解釈してあるが、しかし葉がにがいというよりは根の方がもっとにが
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
この間、越した家よりやや小さかったけれど、普請が新しく、裏の窓を開けると、濃い龍胆りんどういろにすみだ川がながれていた。
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
そこに、田舎の温泉場らしく湯のかけいが通っていた。熊笹の間には、龍胆りんどうの花が山気に濡れながら咲いていた。——
伸子 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
子供達が初めて龍胆りんどうを見たのは、秋も深い草山の草の中であつた。枯れかかつたその草の中になかばうづもれながら、頭をもたげて空の色をねぶつてゐた。
雑草雑語 (新字旧仮名) / 河井寛次郎(著)
「笹龍胆りんどう」や「いおりもっこ」の紋を染め出した白い幕が張ってあって、「大竹流」、「向かい流」という看板の出ている水練場で泳ぎながら帽子にいっぱいしじみが捕れ
江戸前の釣り (新字新仮名) / 三遊亭金馬(著)
「おや。お馬がいない。殿さまはいらっしゃるのに、龍胆りんどうだけが。龍胆はどこへ行ったんでしょう?」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
汗の下に咲いた可憐かれん龍胆りんどうの花が、見られもせず、草鞋わらじで踏まれる秋になった。
(新字新仮名) / 吉川英治(著)
ただ、山桃の樹四、五本のあいだに、龍胆りんどうの紋のついた幕がひらめいていた。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あの龍胆りんどうの花のあたりへけておきなさい」
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「何。龍胆りんどうがいないって?」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あっ、龍胆りんどうだっ」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)