黒髪山くろかみやま)” の例文
佐賀の城下で、陶工とうこう久米一くめいちが断罪となる日、彼の持窯もちがま——黒髪山くろかみやま御用窯ごようがまも破壊された。破壊された中から生れた物があった。
増長天王 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
竜頭りゅうずの滝を見て、戦場ヶ原の入口にりし時は、雨ようやく晴れて、額が痛くなるほど黒髪山くろかみやまが頭上にのぞいている。強風は例によって猛烈に吹く。
更に転じて西松浦の郡界に到れば、黒髪山くろかみやまほしいまゝに奇趣を弄ぶあり、巉巌ざんがんむらがり立てるはこれ正に小耶馬渓せうやばけい
松浦あがた (新字旧仮名) / 蒲原有明(著)
ぬばたまの黒髪山くろかみやま山菅やますげ小雨こさめりしきしくしくおもほゆ 〔巻十一・二四五六〕 柿本人麿歌集
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
三年の間下宿していた吉住よしずみの家は黒髪山くろかみやまのふもともやや奥まった所である。
花物語 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
烏玉ぬばたま黒髪山くろかみやま山草やますげ小雨こさめふりしき益益しくしくおもほゆ
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
夕月のかかる前から、黒髪山くろかみやまの山ふところ、御用窯ごようがまに火が入った、まっ黒な煙か、峡谷から押し揚った。
増長天王 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
黒髪山くろかみやまと谷川との間の狭い盆地に、陶工とうこう久米一くめいち細工邸さいくていがあった。
増長天王 (新字新仮名) / 吉川英治(著)