黒痣くろあざ)” の例文
皆まで聞かずに、勘次の押さえている味噌松の両袖を、何思ったか藤吉はめりめりとむしり取った。と、裸かの右腕に黒痣くろあざのような前歯の跡。
彼の片頬かたほほには見るも恐ろしいかにのような形をした黒痣くろあざがアリアリと浮きでていた。これこそうわさに名の高い兇賊きょうぞく痣蟹仙斎あざがにせんさいであると知られた。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
笑いもせず厭な顔もせず、左半面額から頤まで、ペッタリ墨でも塗ったように、黒痣くろあざのある妖怪のような顔を、無表情にして三十郎は坐った。
猫の蚤とり武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
明智はふと口をつぐんだ。その時丁度死人の咽喉が現れ、そこの皮膚に不思議な黒痣くろあざが見えた。明かに指でつかんだあとなのだ。
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
左のこめかみから頬へかけて太い黒痣くろあざができている。みるみる黒痣はふくれ上がる。竹刀で喰らわされた痕である。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
半面黒痣くろあざの浪人が、これも馬に乗ってついて行くという妖怪画めいた風景も、咎められずに過ぎて行った。
猫の蚤とり武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)