鳥追とりおい)” の例文
鳥追とりおいは藩邸には来ないのであったが、町へ出るとよく見掛けた。深い笠をかむり綿服ではあるが小綺麗な物を着て、三味線を弾いて歩いた。
鳴雪自叙伝 (新字新仮名) / 内藤鳴雪(著)
乗合舟のりあいぶね鳥追とりおい猿廻さるまわしなど在来の型の通りで、中には花見帰りの男がたるしりを叩いて躍っている図などもあったが、一般にまだごく幼稚でありました。
例年やる駒場野のお鳥追とりおいは、秋の末頃であるのにと、誰もが怪訝いぶかしく思って当日の様子を聞き探ると、野遊は表向きのお触れで、当日鷹地の御用狩屋で
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かつては六尺町ろくしゃくまちの横町から流派りゅうは紋所もんどころをつけた柿色の包みを抱えて出て来た稽古通いの娘の姿を今は何処いずこに求めようか。久堅町ひさかたまちから編笠あみがさかぶって出て来る鳥追とりおいの三味線を何処に聞こうか。
伝通院 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ついそこの魚河岸うおがしから、威勢のいいのがまぐろ桜鯛さくらだいをかついで、向う見ずに駈けだしてくるかと思うと、おりの槍が行く、おかごく——武士や町人、雑多な中に鳥追とりおいの女太夫が
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)