髯男ひげおとこ)” の例文
髯男ひげおとこは、それが、なんとなく気懸きがかりになったので、手早く解いてみた。その中から、ゴロリと転りだしたのは、真黒の、三つの防毒マスクだった。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「ほ。美髯公びぜんこう。この髯男ひげおとこは、鄆城県うんじょうけんでは評判のいい与力だったはずじゃないか。よろしい、苦役にはけんでもよい。わが屋敷で雑用に使ってみよう」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
上古の、四道将軍時代の絵に見るようなよろいをつけた髯男ひげおとこが一人、ともえの紋のついたつづらを横背負いにして、馬をあおってまっしぐらにこちらをめがけて走らせて来るのです。
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
四十五歳の髯男ひげおとこ、小供か小犬の様にうれしい予期よき気分きぶんになって見て居ると、そろそろ落ち出した。大粒小粒、小粒大粒、かわる/″\はすに落ちては、地上にもんどりうって団子だんごの様にころがる。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
焔に追われたような形で、最前の、マスクを被った髯男ひげおとこと、マスクの代りに手拭様てぬぐいようのもので顔の下半分を隠した例の印袢纏しるしばんてんの男とが兎のようにねながら、こっちへ、やってきた。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)