髪毛かみげ)” の例文
旧字:髮毛
しかしながら煙はもとより一所いっしょとどまるものではない、その性質として上へ上へと立ち登るのだから主人の眼もこの煙りの髪毛かみげもつれ合う奇観を落ちなく見ようとすれば
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ジルベールは二十一二の温和おとなしそうな容貌、見るからに華奢な、そして活気のある青年であったが、ボーシュレーの方は丈の短い、髪毛かみげのちぢれた、蒼い顔に凄みのある男であった。
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
髪毛かみげの生え際に至るまで妻と生き写しでありまして、少し大きくなりましてからは声までも妻の声と間違いましたそうで、ただ耳だけが小生のと同じ恰好をしていた事を記憶しております。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
頭の髪毛かみげもめっちゃくちゃ。
まざあ・ぐうす (新字新仮名) / 作者不詳(著)
おまへの髪毛かみげなよぶころ
山羊の歌 (新字旧仮名) / 中原中也(著)
愈この盾を使わねばならぬかとウィリアムは盾の下にとまって壁間を仰ぐ。室の戸を叩く音のする様な気合けはいがする。耳をそばだてて聞くと何の音でもない。ウィリアムは又内懐うちぶところからクララの髪毛かみげを出す。
幻影の盾 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その間には一本の髪毛かみげはさむ余地のないまでに、自覚が働いて来たとのみ心得ていた。ほどさいから、そうじゃありません、あの時三十分ばかりは死んでいらしったのですと聞いた折は全く驚いた。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)