高野聖こうやひじり)” の例文
或人の云、中世渡扉とび法師此所に住居す。俗渡扉を呼びて高野聖こうやひじりといふ。仍而此名ありと。云云。然否哉。
俗法師考 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
文字には夜道怪と書いて子取ことりの名人のごとく伝えられるが、じつはただの人間の少し下品な者で、中世高野聖こうやひじりの名をもって諸国を修行した法師すなわちこれである。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
泉鏡花いずみきょうか子の『高野聖こうやひじり』は、その中の幻異志げんいしにある『板橋三娘子はんきょうさんろうし』から出発したものである。
怪譚小説の話 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
明治三十年から、三十二、三年にかけて「辰巳たつみ巷談」「湯島詣ゆしまもうで」「高野聖こうやひじり」などは、ほとんど暗誦するほどに読んだし、鏡花ばりで作文を書いたり、新聞に載った短文までも切り抜いた。
胡堂百話 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
高野聖こうやひじりはこのことについて、あえて別にちゅうしておしえあたえはしなかったが、翌朝たもとを分って、雪中山越せっちゅうやまごえにかかるのを、名残惜なごりおしく見送ると、ちらちらと雪の降るなかを次第しだいに高く坂道をのぼる聖の姿
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それからなお一段と遠方の売買には、高野聖こうやひじりという旅僧が参与した時代もあった。高野聖は一名を呉服聖ごふくひじりとも謂い、江戸の呉服町などはこの呉服聖が開いたと、『慶長見聞集けいちょうけんもんしゅう
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)