高足こうそく)” の例文
十郎左衛門はさすがに吉岡の高足こうそくだけに、武蔵が逃げると見せて振り返りざま払った刀は、確かに交わし得ていたのである。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
阿蘭陀オランダ料理は源内先生の最も好むところで、このような珍味を食い葡萄酒を飲みながら植物学者ヤコブスの如き高足こうそくと談笑することは、この世での最上の愉快とするのだが
首座しゅざの方に見ていた同流の高足こうそく広沢なにがしが招きますから、会釈えしゃくしてかるる座につき、木刀を広沢に預けて、さて机竜之助はいずれにありやと場内を見廻したが、姿が見えません。
高足こうそくの一人小此木辰太郎おこのぎたつたろうは、明治九年に工務省やといになり、十八年内閣属に転じ、十九年十二月一日から二十七年三月二十九日まで職を学習院に奉じて、生徒に筆札を授けていたが
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
後光厳院の貞治じょうじ二年(正平十八年)に足利義詮よしあきらの奏請で、撰集の勅命が二条為明に下ったが、翌三年十月二十七日、撰定を終えないで歿したため、その後を為世の高足こうそく頓阿法師が承け継いで
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
一人は李英朴りえいぼくといって支那人で、一人はパンヂット・アムリっていう印度人だ。この印度人は宝石商こそしているが、実は印度の国民会議派の一人でね。ジャイランダス・ダウラットムの高足こうそくだ。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
郡兵衛は、小坊主の運んできた茶をぐっとんだ。何となくけわしい眼をそろえている三人だった。共にこの三名は江戸で有名な当時の剣豪けんごう堀内源太左衛門の高足こうそくだった。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
叡山の静厳じょうごんには、範宴も師事したことがあるので、その高足こうそくの聖覚法印とは、常に見知っていたし、また、山の大講堂などで智弁をふるう法印の才には、ひそかに、敬慕をもっていた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)