高津こうづ)” の例文
高津こうづの宮の森が見える閑素な八畳間に、四、五人の客が、ささやかな集まりをして、めいめいが筆墨を前にし、しずかに句を作っていた。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……その時鳩尾みずおちに巻いていたのは、高津こうづ辺の蛇屋で売ります……大瓶おおがめの中にぞろぞろ、という一件もので、貴方御存じですか。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかし、東南を望めば、天王寺、茶臼山ちゃうすやま高津こうづの宮、下寺町しもてらまちの寺々に至るまで、坦々たんたんたる徳川時代の家並である。
めでたき風景 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
又百二十八社めぐりと云って、住吉、生玉いくたま高津こうづの三社とその末社とへ月詣つきまいりをしたこと。節分には上町うえまちの寺々の地蔵巡りをして、自分の歳の数だけもちを供えて廻ったこと。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
きたないことを言うようだが銭を捨てるだけの話、本真ほんまにうまいもん食いたかったら、「一ぺんおれの後へいて……」行くと、無論一流の店へははいらず、よくて高津こうづ湯豆腐屋ゆどうふや、下は夜店のドテ焼
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
高津こうづみやへかかった時、わっしがお米を見つけたからこそ、だんだん糸に糸を引いて、弦之丞の居所やお綱の様子も分ったというもんで……。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
当日のお昼御飯はどうするのん? と尋ねると、さあそのことやが、と云って、お昼はお寺の座敷を借りて、高津こうづ八百丹やおたんから仕出しを取ることにした、万事は電話で庄吉に云い付けたので
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
すでに、高津こうづの舞台から、法月弦之丞の姿さえ見ているのだから、いかな耽溺家たんできかにしても、なにか成算がなければ、こう悠々ゆうゆうと構えてはいられないはず。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なに高津こうづ真言坂しんごんざかを降りて農人橋のほうへ行ったと。そして橋は越えずに東堀の刀屋の店頭でも見たというか。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)