驀地ばくち)” の例文
ただ力学の原理に依頼してごうも人工をろうせざるの意なり、人をもよけず馬をも避けず水火をも辞せず驀地ばくちに前進するの義なり
自転車日記 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
直ぐに驀地ばくちという文字通りに駈け出しました。
大菩薩峠:35 胆吹の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
我ながらよくこんなに器用にっていられたものだと思う。第三の真理が驀地ばくち現前げんぜんする。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ふるって驀地ばくちに進めとえたのみである。このむさくろしき兵士らは仏光国師の熱喝ねっかつきっした訳でもなかろうが驀地に進むと云う禅機ぜんきにおいて時宗と古今ここんそのいつにしている。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
因果の大法をないがしろにし、自己の意思を離れ、卒然として起り、驀地ばくちに来るものをふ、世俗之を名づけて狂気と呼ぶ、狂気と呼ぶもとより不可なし、去れども此種の所為を目して狂気となす者共は
人生 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
夢ならぬを夢と思いて、思いおおせぬ時は、無理ながら事実とあきらめる事もある。去れどその事実を事実と証する程の出来事が驀地ばくちに現前せぬうちは、夢と思うてその日を過すが人の世の習いである。
幻影の盾 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)