駿河湾するがわん)” の例文
汽車は駿河湾するがわんに沿うて走っている。窓外は暗闇まっくらだが、海らしいものが見別みわけられる。涼しい風が汗でネバネバしたはだを気持よくでて行く。
急行十三時間 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
あなたまかせの幕艦は、北をさして函館へ行くつもりだったが、風波に遭って、駿河湾するがわんに漂着してしまった。露八は、清水港から静岡へ行った。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
口野浜くちのはま多比たひの浦、江の浦、獅子浜ししはま、馬込崎と、駿河湾するがわんを千本の松原へ向って、富士御遊覧で、それが自動車と来た日には、どんな、大金持ちだって、……何、あなた
半島一奇抄 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
せんだって、駿河湾するがわん北端に近い漁場におけるあじの漁獲高と伊豆いず付近の地震の頻度ひんどとの間にある関係があるらしいということについて簡単な調査の結果を発表したことがあった。
物質群として見た動物群 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
十六人は、感激のなみだの目で、白雪にかがやく霊峯れいほう富士をあおぎ、船は追風おいての風に送られて、ぶじに駿河湾するがわんにはいった。そして午後四時、赤い夕日にそめられた女良めらの港に静かに入港した。
無人島に生きる十六人 (新字新仮名) / 須川邦彦(著)
また駿河湾するがわんのすべての魚を数えずとも、一漁場で一つの網にかかったものだけ数えればよい。その際、おりおり出漁の休日があっても、また魚の数え損じがあってもさしつかえはない。
物質群として見た動物群 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)