駑馬どば)” の例文
すなわちこの物語のごときも、中絶することすでに二三週、今ようやく再び筆を執るといえども、駑馬どばむちうちて峻坂しゅんぱんを登るがごとし。
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
「やい戯※じょうだんじゃねえぞ。余程よっぽど、この馬は与太馬(駑馬どば)だいなあ。こんな使いにくい畜生もありゃあしねえ」
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
シェストフを贋物がんぶつの一言で言い切り、構光利一を駑馬どばの二字で片づけ、懐疑説の矛盾をわずか数語でもって指摘し去り、ジッドの小説は二流也と一刀のもとにほふ
一身を物的境遇より退しりぞかせて、心的境遇に入らしむることも、これまた麒麟きりん老ゆるも駑馬どばに劣るに至らざる工夫くふう。木は根あればすなわち栄え、根やぶるればすなわち枯る。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
麒麟きりんも老ゆれば、駑馬どばというではないか、そのむかしの豪雄とて何ほどのことがあるものか」
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
駑馬どばの尻に鞭が鳴っているようで。まあそれもいいわ。
浮き世にありてまた駑馬どばなりければ
君も僕も差支さしつかえないとしても、聞く奴が駑馬どばなら君と僕の名に関る。太宰治は、一寸ちょっと、偉くなりすぎたからいかんのだ。これじゃ、僕も肩を並べに行かなくては。漕ぎ着こう。
虚構の春 (新字新仮名) / 太宰治(著)